ベトナムでの法人(会社)設立について、概要

日本人がベトナムで事業を行う場合、労働許可の問題や、信用性の問題などから、原則として法人格が必要となります。ただし、日本で起業する時のように、気軽に法人設立、ということはできません。

基本的に、ベトナムは社会主義国であるため、日本では当たり前の「結社の自由」が認められていません。したがって、外国人が会社を設立する場合、日本とは比較にならないほどの手間・労力が必要となり、そのための準備にも、非常に時間がかかることは避けられません。

またベトナムでは、様々な事由により、禁止される業種、条件付で認められる業種などがございます。つまり、お金やノウハウさえあれば、何でもできる、といったわけではありません。

さらに全ての手続きに言えることとして、法律に規定されている内容が、厳格に運用されているとは言い難く、担当者などの「裁量」が非常に強い点も、視野に入れておく必要がございます。

法人設立の為の事前確認

禁止業種と規制業種について

禁止業種一覧

  1. 不法薬物の製造及び加工
  2. 国家の利益、及び組織と個人の権利と利益を害する投資
  3. 探偵・捜査分野への投資
  4. 歴史や国家文化遺産の中で建設する案件。歴史や国家文化遺産の建築と、景観に悪影響を及ぼす案件
  5. 下品な文化及び迷信を普及させる製品の製造
  6. 危険な玩具、人格形成・教育、社会秩序に悪影響を与える恐れのある玩具製造
  7. 売春、女性・児童の人身売買
  8. 人体への無性生殖実験
  9. 国際条約で定める化学製品の製造
  10. ベトナムで禁止されている、又は使用されていない獣医薬品・植物薬品の製造
  11. ベトナムで禁止されている、又は使用未許可である、人への治療薬、ワクチン、メディカルバイオ製品、化粧品、化学薬品殺虫剤の製造
  12. ベトナムへ有害廃棄物を持ち込み、処理を行う案件、有毒化学品を製造する案件、国際条約の規定で禁止されている有毒化学薬品を使用する案件

規制業種(条件付業種)一覧

  1. 国防や国家の安全に関する業種
  2. 金融・銀行業務
  3. 文化や情報、出版業
  4. 娯楽産業
  5. 天然資源の採掘、生態環境保護産業
  6. 教育・訓練事業
  7. 法律や国際条約に定める、他の事業
  8. 放送・テレビ放送
  9. 文化的作品の製作、出版及び配給
  10. 鉱物の探査及び開発
  11. 長距離通信及び情報伝達網の設置、及び長距離通信及びインターネットサービス
  12. 公共郵便網の建設、郵政及び宅配サービスの提供
  13. 河港、海港、空港の建設及び運営
  14. 線路、空路、道路、海路、現地水路での貨物及び乗客の輸送
  15. 漁獲業
  16. タバコ製造
  17. 不動産業
  18. 輸出入及び流通分野における事業
  19. 教育・訓練
  20. 病院・診療所
  21. 国際条約において外資への市場開放を制限しているその他投資分野

ベトナムへの進出形態について

ベトナムへの進出形態は、法人の設立だけにとどまらず、様々な形態がございます。今後行う予定の事業によって、事前に検討しておく必要があります。

有限会社の設立

有限会社は、ベトナムでは最も多い法人形態です。また、日系企業が法人を設立する際は、そのほとんどが有限会社となります。出資者が1人である場合、出資者が2人である場合で、人的要件が異なります。有限会社は、出資者が50人以下であること、不特定多数からの投資を募集できないことがデメリットといえますが、現実的にはそれほど問題視されることはありません。

株式会社の設立

日本では、会社といえば株式会社を指すほど一般的な法人形態です。日本では、株式会社であっても手軽に設立することが可能ですが、ベトナムでは非常に複雑な要件を満たす必要があるため、日系企業にはほとんど利用されることがありません。

個人事業

ベトナムで個人事業を行うことも、一応可能です。もっとも、日系企業が個人事業形態で進出することは、信頼性の問題や労働許可の問題、査証の問題などが伴う為、現実的ではありません。

ベトナム企業と日系企業との、事業提携契約による進出

日系企業は、ベトナムに新たな法人を設立せずに、ベトナム企業との間で事業提携契約を締結し、それに基づいてベトナム国内で事業を展開する、といった手段です。大型のプロジェクトなどによく利用されます。

合弁会社による進出

合弁会社とは、日系企業(又は個人)とベトナム企業(又は個人)との、共同出資により設立された法人をさします。事業を行う際、ベトナム企業との合弁会社であることが、ライセンス取得の条件である、といったことが非常に多く見られます。

支店の設置

日本国内にある法人の、「ベトナム支店」といった位置づけで、事務所を開設する手段です。方人格は得られませんが、事務所として事業活動が可能です。法人の設立よりは容易に開設が可能ですが、税務問題をはじめとして、諸問題が数多く生じる為、現実的には独立した法人(有限会社など)を設立するほうが、活動がやりやすいといった声もございます。

駐在員事務所の設置

駐在員事務所とは、日本国内で事業を行う法人の、「窓口業務」といった位置づけとなります。具体的には、日本国内企業の宣伝活動や、ベトナム市場調査、ベトナムパートナーとの連絡・監督業務などに限定され、駐在員事務所自体での営利活動はできません。つまり、何らかの契約を行う際、契約主体はあくまで日本国内企業であり、駐在員事務所はその取次ぎ等の役割となります。

法人設立に必要な書類

ベトナムへで法人を設立する場合、事前に日本国内で様々な書類を準備しておく必要があります。また、準備した書類は、公的機関による認証を受け、さらに翻訳しておく必要があります。

  1. 日本国内で、必要書類の準備
  2. 日本国内の公証役場による公証
  3. 法務局による証明
  4. 外務省による証明
  5. 在ベトナム領事館による認証
  6. ベトナム国内の公証役場での公証
  7. ベトナム国内の認定翻訳機関による翻訳

これら準備を経て、初めて申請書の添付書類として使用が可能となります。

法人設立申請書(事業登録申請書)

ベトナム計画投資省発行の申請書を使用します。

定款

ベトナムの法律に従い、定款を作成します。

出資者を行う者の身分証明

個人の場合は、身分証明書の写し。法人である場合は、登記簿謄本、委任代表者に関する書類、代表取締役の身分証明書写しなど。

財務能力に関する書類

銀行の残高証明書や監査済み財務諸表の写しなど。ケースによっては、銀行の通帳写しでも可。

事務所賃貸契約書

出資企業の代表取締役、又は現地法人の代表者名義での契約が必要。或いは、ベトナム国内での名義貸しを利用する手段もあります。

パスポートの写し

出資企業の代表取締役、現地法人の代表者、取締役など、関係者のパスポート写しが必要です。

その他の書類

その他、状況によって、追加書類を求められるケースが多々あります。

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